• 土田国際税務会計事務所

通貨別の資産構成


資産を円建てて持っていて大丈夫でしょうか、といったご質問をいただくことがあります。

日本は現在、急速な少子高齢化が進んでいます。

国の債務は1200兆円を超え、国民一人当たりで800万円超の借金を抱えている状況です。人口が減れば、借金総額は変わらなくても一人当たりの負担額が大きくなりますので、なかにはこのまま借金を払えずに財政破綻、円は大暴落するなどといった過激な声もあります。

実際、経済的に少子高齢化は日本の最大の問題であるといえます。経済活動の規模(GDP)は、細かく分解していけば、つまるところ一つ一つの物を売ったり、他人に何かサービスを提供するといった個々の取引に分解することできます。経済成長をしていくには、技術革新や機械化等による生産性の向上も求められますが、一番手っ取り早く、かつ簡単であるのが取引の参加者の総数を増やすこと、すなわち人口が増えることといえます。

経済成長ばかり追い求めるのではなく、すでにモノ余りの世の中なので、豊かさではなく幸福度といっものを追求すべきといった声も一部にあります。しかしながら、経済的な豊かさと、主観的な感覚である幸福度とは、同じ次元では比べられず、一方が一方のトレードオフの関係にはありませんし、主観的な概念を国民の目指すべき指標にすることはできません。幸福といった感覚は主観的なもので、経済的な豊かさが前提条件となりませんが、一方で制約条件にはなりえますし、両者が矛盾するものでもありませんので、個人的には経済的に豊かで幸福感も感じられるというのが理想です。

現実的に、日本は加速度的に進む人口減少による経済規模の縮小を、生産性の改善や活用されていない女性や高齢者の労働参加で抑え、さらに経済を成長をさせていくことは可能でしょうか?

極めて困難、というのが経済学者の間のコンセンサスではないでしょうか。移民の導入が考えられますが、政府は否定的です。高齢化の問題は、人口減少だけでなく、生産性の向上を生み出すイノベーション自体が起きづらくなるといことだといえます。イノベーションは、既存のシステムであったり環境の創造的破壊を前提としますが、こうしたエネルギーはいつの時代も若者が担ってきました。人間は年を取るごとにより保守的に、より安定を求めるのが自然であって、生物学な現象といえます。

こうした八方ふさがりの状況のもと、すべての資産を円建てもっていて大丈夫なのか?という疑問は、すなわち日本の将来は大丈夫か、という問いでもあります。

日本の財政問題は、借金の総額の巨大さがクローズアップされますが、資産規模や純資産といったバランスシート(B/S)全体をみていく必要があります。

B/Sを見る際に、現在の財政ということであれば政府部門に限定して分析すべきですが、将来の財政であれば、歳入の原資となる民間部門もあわせて分析する必要があると考えてます。というもの、歳入の大半を占める税収を確保するための日本の税制は、取引のフローだけでなく、相続税や贈与税、固定資産税や自動車税など資産のストックに対しても税を課される仕組みになっているからです。

日本の民間部門を加えた日本全体の純資産は、3,290兆円(2015年末)もあります。純資産とは資産から負債を引いたもので、当然負債には1200兆円の国の借金も含まれます。もちろん、現預金だけでなく固定資産なども含んだ額となりますが、それにしても借金を清算したうえで3000兆円以上も残るというのは、凄い数字です。日本がこれまで積み上げてきた資産は膨大で、資産総額は1京219兆円となります。

資産総額をそのまま政府債務に充てるわけではありませんので、この巨大な資産規模が膨大な政府債務を弁済するのに十分であるかがポイントですが、それには誰にも断言できません。

政府としては、巨大な資産規模からも徴税を行いつつ債務の減少を図ると同時に、資産を何らかの手段で増大させていくことができれば、借金は減りますし国の富も増加することになりますので、最善の解決といえます。

実は法整備という点ではすでに入念な対策が取られています。

まず徴税漏れを防ぐために、国民所得のフローと資産のストック両面の正確な把握が必要となります。マイナンバー制度が導入されましたが、今後マイナンバーを預金口座に紐づけることで、民間部門のフローとストックそれぞれがほぼガラス張りされることになるでしょう。フィンテックや電子マネーの急速な普及もガラス張りの効果があります。さらに、必要であれば今後高額紙幣の廃止といった思い切った手段をとることで、表にでてこないアングラマネーを把握していく効果が期待できます。ここまでできれば、国民の財産と収支をガラス張りにしていくという点ではほぼ完ぺきといえます。

次に、日本の膨大な資産が海外に流出してしまうのを防ぐ必要があります。先進国の間では資本の移動は原則自由ですので、実務的に資産の海外流出を完全に防ぐことは難しいのですが、税務上日本の居住者が非居住者になることによって生ずる徴税ロスを防ぐための出国時課税がすでに導入されています。また、国民の海外資産を正確に把握するため、5000万円以上の海外資産については国外財産調書の申告書への添付が義務付けられていますし、諸外国との財産・損益状況に関する自動情報交換制度ももうすぐ開始されます。徴税という観点から、国民資産のストックや収支に係るフローを正確に把握するための対策は、完全ではありませんが整っている状況です。

一方、膨大な資産が徴税により減少してしまうことは、国民が貧しくなることになりますし、将来の徴税の原資の減少でもありますので、好ましくありません。資産価格が継続的に逓増していく必要があり、そのためには経済環境が緩やかなインフレにあることが求められます。インフレはまた、民間部門から政府部門への所得の移転が図られる、いわゆる徴税効果もありますので、巨大な債務を抱える日本には有効な政策といえます。インフレ税は消費税などの引き上げよりも、国民が直接的な痛みを感じることが少ないので、選挙で審判を受ける政治家にとって好まれる傾向にあります。現在、日銀は2%のインフレを目指していわゆる質的量的異次元緩和を行っています。

もっとも、インフレは現金の価値を毀損します。特に日本では約1800兆円の金融資産のうち50%超が預貯金に配分されていますので、現在の状態でインフレが進むと資産価値の大きな毀損につながります。したがって、政府は「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げて保有現預金の価値の毀損による国民の痛みを和らげるように資産配分の見直しを推奨しているわけです。同時に、金融庁は金融機関に対して、受け皿となる資産価値を増加させるような良質の金融サービスの提供を強く求めています。

一つの政策が一つの効果を期待しているわけでは必ずしもありませんので、上記の政策効果が限定されるわけではありませんが、少なくともある側面から見ると一貫した政策対応がとられているがわかります。しかしながら、CPIの増加率など現実の経済実態は思い通りに進まないところもあります。また、日本の財政再建にあたって一丁目一番地であるはずの2020年のプライマリーバランスの黒字化は絶望的な見通しであるばかりでなく、政府には収支を度外視した歳出圧力はますます大きくなっているように思えます。

さて、「円」に話は戻りますが、人口減少に伴う経済力の減退、財政問題といった日本の国力の低下は避けがたいといえます。同時に、日本全体のバランスシートは非常に強固で、かつ債務返済のための政策対応がとられていますので、日本が破産するとか円が暴落するといった要素は、少なくとも現段階で見られないというのが現状といえます。そうした劇的な変化ではなく、個人的には19世紀のイギリスのような緩慢な衰退の道をたどっていく可能性が高いと考えています。

通貨別の資産構成に関しては、年齢や収入、資産規模によりアドバイスは変わってきますが、30代であれば50%~70%、40代であれば40%~60%、50代であれば30%~50%、60代であれば20%から40%程度を目安に外貨建て資産を保有していくことが望ましいと考えています。外貨にっよっては、ある程度の金利収入を期待することもできます。外貨といってもドルやユーロ、元、ウォンなど種類は様々であり、通貨別の保有割合を考えていく必要がありますが、それについて改めて別の機会に説明します。


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