• 土田国際税務会計事務所

投資の心得


投資については様々な情報があふれています。

もっとも、テレビや雑誌のいわゆる’’投資情報’’というものは、その多くが正しい投資を行うにあたってあまり価値のある情報とはいえません。日々の株価がどうなったとか、1年間で元本を数倍に増やしたとか、真実かどうかわからないような雑多な、怪しい情報やいわゆるおいしい話があふれています。そして、投資というと何か後ろ暗いことのようなとらわれ方をすることもあります。

そもそも投資とはいかなるものでしょうか。

投資とは、資本主義の世の中にあって経済活動の基礎となるものであり、イノベーションを生み出す原動力といえます。資本活動とは、一言でいうなら資本を投下して価値を生み出していく行為といえます。たとえば、能力のある友人が会社を設立するにあたって、その会社に500万円出資したとします。その友人が事業を成長させることで、投資家としては配当や一株たりの純資産額の増加を通じて投下資本を増加させることができます。

こうした取引を投資活動として理解することは容易であると思います。世の中には投資があふれており、投資活動が経済成長の推進役となっていることが理解できます。しかし、上場有価証券への投資となると、これと異なる見方をして株価の上下によって賭け事のように勝った負けたと一喜一憂する人が多いように感じられます。上場有価証券への資本の投下は、一般的な投資活動とは異なるのでしょうか。決してそうではありませんが、一方で明らかに投資とは言えない行為が繰り返されていることも事実です。一般的に、価格の差に注目して取引を行う行為を投機といいます。すなわち、資本を投下して投資先が生み出す価値の増大を通じて資本の増加をはかることを投資といい、同じく資本を投下したとしても、価格の変動を利用して利益を得ようとする行為を投機といいます。どちらが高等でどちらがそうではないというのではなく、あくまでも両者を厳密に区別する必要があるのです。ただ、投機活動を通じて経常的に利益を上げていくことは極めて難しく、巷の雑多な情報はこうした投機熱を押し上げるものが多いのですが、その実投機を通じて長期にわたって利益を上げつづけている人は、恐らくほんのごく一握りでしょう。巷の株で儲かったといった類の話は、ほとんどが有料のセミナーや有償での情報提供などのそれ以外の収入を目的とした広告と考えられ、そもそも株式で儲かったことを吹聴すること自体が趣味の悪い話です。

さて、上場有価証券への投資活動におけるリスクについて考えたいと思います。株の投資は株価の変動が激しいのでリスクが高いという表現がよく使われますが、果たして正い表現でしょうか。投機活動を行っているということであれば、この表現はまさに正しいといえます。しかし、投資とは、投資先の企業が経済活動を通じて価値を生み出していくことによって資本の増大を図る行為ですので、投資におけるリスクとは日々の株価の変動といった価格のボラティリティではなく、資本の投下先が価値を生み出すことができなかったり、生み出す価値が投下資本に比して十分でないことを指すことになります。

どのような企業に投資すべきかといったことも聞かれることがありますが、これは投資を行う人が個々に判断すべきです。少なくとも、自分の得意な範疇で投資活動を行うべきで、不動産に詳しい人もいれば特定の業界に詳しい人などいろいろですので、投資先として妥当と考えられる対象に絞って大切な資本を投下すべきです。商才があれば、自分の事業に投資してビジネスを大きくすることもできます。原則として、世の中にはごくたまに卓越したリーダーシップとビジネスセンスを有する経営者がいますので、こうしたリーダーが経営する企業に対して妥当な価格で投資できれば、成功の可能性は極めて高いといえます。

配当についてですが、配当性向の高い企業が優秀な会社と思われがちですが、正しいとはいえません。そもそも経済活動を通じて価値を生み出していくこと、すなわちビジネスに関して自分ではできない、或いはより優秀な経営者が率いる企業に投資をすることを本意とするなら、税金をかけられて配当を受け取るよりも、その優秀な経営者に留保した利益をさらに投資してもらって企業価値を高める方が理にかなっています。かりに自分の方がよりよく事業活動を通じて価値を生み出せるというのであるなら、投資効率の観点から自分でビジネスを行うべきです。

また、投資において忘れてならないことは、複利の効果といえます。日本では長らくデフレが続いていて利息や利率という概念が普通に生活していると身近にない状況なので理解しづらいのです、投資で最大限の効果を得るためには、複利の効果を享受する必要がありあります。そして、複利の効果を十分に享受するためには、長期間にわたって投資する必要があります。一般的に比較的短期間に取引を繰り返しているようでは、元手である資本を大きく増やすことは難しいといえます。

経営者が優秀であるか否かは、適切な資本政策を通じて企業価値を増大させているかどうかで判断できます。企業における資本政策とは、既存事業への投資、新規事業への投資、配当、借入金の返済、自社株買いといったところですが、適切な判断をするためには、社会の変化や技術革新などに関して正しいビジョンを持ち、将来の事業環境に関してビッグピクチャ―を描ける能力が求められます。また、社員を率いるリーダーシップも求められます。最近よく話題になる昇給の問題は、既存事業への配分の一環と考えられます。そして、これからの時代は企業経営者だけでなく、個々人が自分の資産(資本)に関して適正に配分を行っていくことが求められると考えています。第四次産業革命は着実に進行しており、これまで大企業中心であった経済環境が個人を中心とするものに変化していくはずです。日本では岩盤規制のために実感がわきにくいのですが、アメリカや中国などでは車の配車サービスやフィンテック、民泊といった新しいサービスが生まれており、日本でも中古品の売買などが盛んになってきていますが、同じ流れの中で発生したサービスととらえることができます。こうしたいわゆるシェアリングエコノミーは、個人の時間や空間、遊休資産を有効に活用することで大企業中心の経済から個人を開放する可能性を秘めています。こうした流れは、第四次産業革命の進行とともに今後ますます強くなったいくはずですが、一方では企業に勤めていることに価値がある、正社員になることが勝ち組といった旧来の価値観の転換が求められることになります。すなわち、個々人においても、今後は大企業に勤めているとか正社員であるから勝ち組なのではなく、個々人で自分自身を含めた自分の有する資本を明らかにしたうえで、その適切な配分を通じて社会に価値を生み出していくことができるか否かが重要になってくると考えています。


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