• 土田国際税務会計事務所

シンガポールと香港の比較


先週は北京とシンガポールに出張でした。

シンガポールと香港はともに租税負担が比較的軽く、キャピタルゲイン課税などが免除されていることから、軽課税国として知られています。

個人的にも将来的にどちらかの地域に生活拠点を移すことも選択肢の一つなので、一見に非常に似通っているようにみえるこの亜熱帯の2つの地域の違いについて考えてみました。

シンガポールはもともとマレー連邦から華人が中心となって独立した都市国家で、人口の3割程度が外国人といわれています。残りの7割の70%程度が中華系であり、その他がインド系やマレー系となります。シンガポールはその国土や資源などが極めて限られていますので、足りないものを外から補う必要があります。また、シンガポールを作った華人自体が元はアウトサイダーだったため、異なる他社を尊重する、多様性を重視する精神が人々の言動や社会のはしばしに感じられます。また、限られたものを有効に利用するために社会システムから地下鉄の乗り降りまですべてが徹底的に合理的に運営されています。

一方香港は、中国大陸と地続きの九龍やその対岸の香港島、その他の小さな島々から成り立っており、地理的にも中国の影響が強く、というよりもともとは中国人、広東人であったものが、歴史的な経緯から長く英国の植民地であったことから、大陸から隔絶された独自の文化を育んできたといえます。その特徴としては、英国風の自由主義の気風と、文化大革命の影響を免れたことから中国の伝統的な風習などがある意味大陸よりも残っているところがあり、それぞれがうまく折衷された印象を受けます。人口の90%以上がいわゆる香港人(中華系)となります。

シンガポールは国家戦略が明確になっていますので、法規制、規則は国家戦略に沿った形で形作られることになります。その基本的な精神は、多様な社会を前提としていますので、客観性、公平性を基礎としていると考えられます。香港は、アングロサクソン的な自由主義・合理主義が文化に組み込まれており、そこでの法規制は自由に対する制約要件として定義されると考えられます。たとえば、両地域ともフリーポートを有することで有名ですが、香港は自由競争、自由主義に価値を置くため、その必然として自由貿易政策を採用し、商品の輸出入に関税は課さず、貿易障壁は設けられていません。自由であることに価値があるため、必然的に香港では自由貿易政策が採用されることになります。繰り返しになりますが、こうした自由を基礎とする価値観はアングロサクソン特有のもので、世界のタックスヘイブンの多くの地域が旧英国植民地であることは無関係ではありません。シンガポールは、物流や金融、人材(いわゆるヒト、カネ、モノ)のハブとして機能することを目的として、特定の地域にフリーポートを設定して自由な物流を保証しています。

さて、富裕層のなかには、どちらかの地域への移住を検討される方もいらっしゃるかもしれません。単に税率などの租税負担を比較するだけではなく、それぞれの地域の文化的な背景や社会基盤なども考慮して判断されることをおすすめします。


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