- 土田国際税務会計事務所
中国でのBEPS対応
中国の国家税務総局は移転価格文書の管理に関する規定(14号公告)を公布しました。
中国での移転価格文書の作成と税務当局への提出については、すでに2008年から義務化されて実務上の運用が開始されています。
今回の14号公告では、移転価格文書に含まれるマスターファイルの税務局への提出にあたって、中国に複数の法人を有する企業グループが、所定の手続きを経ることで、任意の一つの現地法人を代表としてマスターファイルをその所轄税務局に提出することで、企業グループとしてマスターファイルの提出がなされたものとされることになります。
日系多国籍企業の場合、中国に複数の現地法人を有するのは一般的であり、各地の税務局からバラバラにBEPS関連資料の提出が求められるという事務処理上の煩雑さが懸念されていました。
以下14号公告の詳細です。
1、規定に沿ってマスターファイルの準備が必要な企業グループにおいて、グループ内の企業が2つ以上の税務機関の管轄に跨る場合、1つの企業を選択して主管税務機関に主体的にマスターファイルを提出することが出来る。
グループ内の他の企業がその主管税務機関に提出を要求された場合、書面にて主体的にマスターファイルを提出した点につき説明することで提出を免れることが出来る。
ここでの主体的な提出とは、税務機関による特別納税調査前に提出するケースを言う。
グループ内企業が特別納税調査にてマスターファイルを既に提出した場合、主体的にマスターファイルを提出していたとはみなされない。ただこの状況でも企業グループは1つの企業が前述の方法を活用することが出来る。
2、主体的な提出を受理した際、税務機関は以下の通り対応する。
(1)企業グループの各社が1つの省、直轄市、自治区に跨る場合、マスターファイルを受理した主管税務機関は省レベルの税務機関にファイルを提出、省レベルの税務機関が責任を持って管理し、要求に応じて企業グループの各社の主管税務機関に共有する。
(2)企業グループの各社が2つ以上の省、直轄市、自治区に跨る場合、マスターファイルを受理した主管税務機関は国家税務総局にファイルを提出、国家税務総局が責任を持って管理し、要求に応じて企業グループの各社の主管税務機関に共有する。
3、当該公告は2018年5月20日に施行される。
現在、江蘇省では、省内の多国籍企業をその利益額や利益率、関連者取引のボリューム等の観点から重要性に応じて3段階の分類を行っています。そして、重要性が高いと分類された企業150社程度に対して、個別にBEPS関連資料の提出が求められています。
今回のBEPS関連資料の収集は、江蘇省内の企業に対するものであり、かつ今後の納税管理のためのデータベースの作成のためと考えられますが、今回のデータベースの作成がうまく機能するようであれば、今後同じ動きが他地域に広がっていくことが予想されます。
従来、中国での移転価格調査は所轄レベルの税務局の主体的な判断で開始されることも多く、必ずしも他地域のグループ企業の所轄税務局と連携するものばかりではなかったのですが、今後は税務局として他地域のグループ企業の状況を踏まえて調査が行われることになると考えられます。